◎共犯と身分(第弐夜)
〜65Tの「共犯」はいかなる共犯形態を意味するか?
1.学説の整理
・判例:すべての共犯形式を含む。
(根拠)@法文上、65条も共同正犯の規定とともに、「共犯」の章にある。
A65T「共犯とする」という文言に着目。
(批判)@真正身分犯については、身分のない者の行為は、その実行行為としての類型を
欠くので共同実行はありえない(団塚の根拠)。
・団塚:真正身分犯については教唆・幇助に対してのみ適用。
不真正についてはすべての共犯形式に適用。
(根拠)@共同正犯は正犯である以上実行行為をなし得うるものでなければならない。
しかし、真正身分犯における非身分者には規範が与えられておらず
実行行為をなしえない(つまり、非公務員には収賄してはいけない、という
規範は与えられていない)。よって、真正身分犯の共同正犯の成立の余地なし。
A不真正身分犯は非身分者でも実行行為をなしうる。
(批判)@不真正身分犯に対して、65Uを適用するのは不当(団塚からすれば当然だが)。
A身分犯を「義務犯」として把握するものであって、妥当でない。
≪これより下は、学説の組み合わせ問題用≫
・教唆犯・幇助犯についてのみ適用されるとする説
(批判)@身分犯を「義務犯」として把握するものであって、妥当でない。
・共同正犯についてのみ適用されるとする説
(根拠)@教唆・幇助は真正身分犯の「実行行為」を行うものではないから、身分を必要とせず、
65条がなくても当然成立。65条は共同正犯について特別に定められた規定。
(批判)@身分犯の特殊性を強調すると、非身分者についても当然に教唆・幇助が成立する
とはいえなくなる。
2.具体的な処理
→非公務員甲が公務員乙と共同して賄賂を受け取った事案。
・判例=甲と乙は収賄の共同正犯。
・団塚=乙は収賄の正犯。甲は収賄の教唆または幇助。