◎条約
1 意義
条約とは、外国との間における国際法上の権利義務関係の創設・変更に関わる文書
による法的合意をいう。
2 手続き
内閣が作成・締結(73条3号)→国会による事前(例外的に事後)に承認を要する(61)。
☆形式的効力において条約は法律に優位する。
3 国会の事後承認のない条約の効力(事前承認のない条約は無効)
(1) 国内法的効力
・無効説(通説)
∵①承認の効力を事前と事後で区別すべきでない。
②73③に反し違憲無効。
(2) 国際法的効力
・無効説(通説)
∵①事前事後で区別すべきでない。
②承認を要することは憲法に明記されており、相手国も承知すべき。
③国会の審議・統制を重視。
・有効説
∵①国際法により決せられるべき。
②手続不明瞭。国際法的安定性にも資する。
③承認は国内法的効力要件にすぎない。
④事前と事後とで異なるのは当然。
・条件付き有効説(原則無効)
∵①承認があったかどうか、不明瞭な場合が多い。
②承認は効力発生要件。
③国際法上の安定性。
・条件付き無効説(原則有効。手続違反が明白で相手国が承認しているときは条約
の無効を主張しうる)
∵①国内法違反を理由に国際法的効力を否認することはできない。
②条約の法的安定性。
(3) 国会の修正権(相手国と交渉すべき義務を負うという意味での修正権を認めるこ
とができるか)
・否定説(一括承認・一括不承認のみ)
∵①内閣の条約締結権を侵害する。
②承認は本質的に「阻止的・受動的」。
③条約は相手国の合意を要する。
④条約は相手国の合意を要する。
・肯定説
∵国会の意思を尊重すべき。
61条は両院不一致の場合に妥協すること(両院協議会)を予測したもの。
☆結局「修正権」という言葉の定義の問題に帰着する。
(4) 条約に対する違憲審査
・否定説
→条約優位説からすれば当然。
→憲法優位説に立ちつつも81条に「条約」の文言がないこと、条約は外国との
合意のよって成立することから否定する見解もある。
・肯定説
∵条約は81条の「規定又は処分」に含まれる。
→部分的肯定説=少なくとも民主体制や基本権を侵害するような条約は否定さ
れるべき。
橋本説=条約自体は審査の対象にならないが、法令等の審査にあたって条約
を前提問題として審査しうる。
☆肯定説に立っても、違憲無効となるのは国内法的効力のみ。
(5) 憲法と条約の優劣関係
・条約優位説
∵①98Ⅱ
②98Ⅰ・81から「条約」が除外されている。
③73は条約の効力の根拠を定めるものではない。
・憲法優位説
∵①98Ⅱは、違憲条約まで遵守することを定めたものではない。
②98Ⅰは国内法秩序について定めたものなので除外されているのは当然。
③81条も条約の特殊性から除外したにとどまり、国内法的効力については審
査権を行使しうる。
④憲法の方が改正手続が困難
⑤条約の締結権・承認権は憲法の授権に基づくもの。
⑥国際協調主義から条約優位を導き出すのは困難。
・折衷説=憲法の根本規範的部分については条約に優位する。その他については同
位か、劣位。